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| いつごろからSMITHSという時計が気になり始めたのだろう。今を去る事10数年前、世の中がまだバブル景気に浮かれる前の頃だろうか。その頃はまだアパレル関係の会社にいた私は、その頃の流行であったトラッド関係の服を扱っていた。「TRAD」今の若い方にはなじみの薄い言葉かもしれないが、私と同世代か上の年代の方には、懐かしい響きで思い出されるであろう。今は無きVANという会社から、そのブームはやってきたように思う。 |
| アメリカ東海岸のアイビーリーガーという名門大学の学生の服装、ライフスタイルを基に日本用にアレンジしたものだったと思う。我々にとっては、憧れのライフスタイルであり服装だった訳だが、そのアクセサリーの一端として、今ほどでは無いにせよ、少しクラシックなスタイルの時計も、一部のおしゃれな人達の間では流行っていた。アメリカ東海岸の文化、その源流を遡っていくと、彼らのルーツでもあるイギリスへとたどりつく訳であるが、何故か服もアイビーからブリティッシュへと流行が移っていき、「RALPH LAUREN」などのブリティッシュなスタイルをルーツに持つ服へと変わってきつつあった。 |
| そこで「MINI」であるが、当然これはミニスカートのミニではない。(残念ながら)一般の方々には、ミニクーパーといえばわかりやすいが、そのミニである。 |
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なぜか、先程のTRADの服を着ている人達の間では、車はMINIやMGなどのいわゆる英国車を乗りこなすのが通とされた。しかしその当時、今程その外車といわれる車は一般的ではなく、当然高価だから我々一般庶民は指を加えて憧れているだけであった。しかしある日、乗せてもらった古いミニのメーター(当然センターメーター)そこにに輝くSMITHSの文字。「やはりメーターはスミスだよ」というその人の言葉は、なぜかはっきり覚えていた。 |
| 月日は流れて、時計コレクターになっていた私はある日、ロンドンのとあるノミの市のひなびたブースで、その時計がガラクタのように、山積みの皿の上の、ほとんど壊れて動かなくなった時計のガレキの中に、横たわっているのを発見した。 |
| 風防は、ひび割れ、皮ベルトも無残にも干乾びていたが、少しリュウズを巻いてやると先が赤くペイントされた小さな矢印型の秒針が動き出した。「生きている」何故か小さな感動を覚えた私は、店のオヤジに、これはいくらか?と尋ねてみたところ、ちらっと横目でみたオヤジは、つまらなそうに・・・ポンド、と言った。 |
| その時代、アンティーク時計のブームは既にやってきていたとは言え、ROLEXなどの有名ブランドが中心で、SMITHSなどと言うマイナーなブランドに注目する人は誰もいなかった。 |
| そのSMITHSと文字盤に小さく入った時計を持ちながら、なおもそのガレキの山をよく見ると、その中にSMITHSと書いてある時計が、けっこうある・・・。女性物の小さいモデルや、子供用?のような少し安っぽいモデル。また、他のブースにも・・・。軍用時計や、掛時計、目覚まし時計、キッチンタイマーに至るまで、ありとあらゆる種類のSMITHSが、かつてのイギリス中の家庭にはあったようだ。そんなにも、かつてはイギリス中にあり、又、イギリス人に愛されてきた時計メーカーが、今はもう無いのだ・・・。私は一種の感慨のようなものが心に浮かんで、若き日に、イギリス車にあこがれ、その中心にしっか鎮座ましましていたSMITHSのロゴの入ったメーターを思い出していた。 |
| SMITHSについては、今まで日本では詳しく調べたり、又、論述したりされたことはほとんど無く、その生い立ちや、いつ消えていったのかさえ、不明な部分が多い・・・。おそらく'70年代に日本製のクオーツ時計が世界を制覇し始めた頃、静かに消えていったのだろう。それと同じ頃、やはり、かつての栄華を誇った英国車も、衰退し始め、大英帝国の没落が決定的になり、イギリス病とまで言われた長く暗い時代が、幕を開けるのだ・・・。 |
| それはさておき、何故SMITHSという時計が、私を魅了したのか・・・。私自身にもはっきりした理由はわからない・・・。消えていったものへのノスタルジーか・・・、かつてのイギリスの名車達と共に、その輝かしい歴史を刻んだゆえか・・・? |
| 私自身、車、時計に関わらずイギリスの物が好きだし、かの国は日本と同じように島国で、四季があり、人々もアメリカなどと比べると少し内省的で、屈折しているところもある。その辺りが、関西でもヘンコ(ヘンクツでガンコの意)といわれる私自身にも共感を覚えるのだろうか・・・。 |
SMITHSという時計に話を戻すと、機械的には何ら特筆すべきものは無く、言ってしまえば平凡で、スイス製の機械のほうが総じて優れているかもしれない。 しかし、文字盤、機械に記された゛MADEIN GREATBRITAN″の文字は、押し寄せてくる゛SWISSMADE″に、完全と立ち向かうジョンブル魂を表している。それはかつて、ポルシェやフォードなどの大排気量の車の鼻っ柱を、その小さな車体で抑えて、レースの先頭を駆け抜けていったMINIを思い起こさせる。それと、両方共、姿、形が愛らしい。MINI(当時旧型)は、よく可愛いと言われるが、それは時代の経過として、結果的にそうなっただけで、今の一部の日本車のように、さあ可愛いでしょう、買ってくださいというような可愛さではない。当時、MINIほど機能的で、革新的な車は無かったと思うし、徹底的にそれを追求した結果、あの形になった。だから、可愛けれど、それは決して媚びている可愛さでは無く、生まれもった必然としての愛らしさである。それと、両方共大衆的で親しみやすい。可愛さもあるが、又、凛としたというか、一本筋が通っているというところも、やはり似ているような気がする。 |
| なんだかんだと長々と述べてきたが、大衆的で親しみやすく、かつ、くずれていない良さ、一本筋が通っていて、品が有る。 |
| 蛇足ですが、それから、やっと手に入れた私のMINIにも、SMITHSのセンターメーターを取り付けたのは言うまでも無い。 |
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